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月の下の鎮魂歌

ルルーシュとナナリー。亡き、兄に向けて。

なんだかんだ言って、仲良かったんじゃないかとぐるぐる考えて書きました。

仲が良かったからこそ、全ての始まりとして。










アッシュフォード学園のクラブハウスにはダンスホールが存在する。
裕福な家柄の子息息女が多いこの学園では、ときどきダンスパーティが行われることもあるからだ。
そのダンスホールの隅には、1台のグランドピアノが設置されている。
そのピアノは学園を建てる際に、理事長であるルーベン・アッシュフォードが本国の屋敷からわざわざ持ってこさせたものである。
しかしパーティの際にはアッシュフォード専属のオーケストラが来るので、使われることはまずない。
学生のほとんどがそのピアノの音色を聞いたことがないし、生徒会のメンバーであってもそれは同じだ。
しかし、使われないはずのピアノだが定期的にきちんと調律されている。
なぜならこのピアノは、たった2人のためだけに設置されたものなのだから。




月が真上に昇る。
辺りは静まり、眠りについている時間。
ほのかな月明かりの中、クラブハウスのダンスホールに2つの影が動く。
2つの影の内1つはピアノの椅子に座り、もう片方はピアノのそばに佇む―――いや、座る。その影は車椅子に座っていたからだ。


「お兄様、ごめんなさい…」
「いいさ、このくらい。ナナリーはあまりわがまま言わないからな」


本当はもう眠っている時間だけどなと笑うと、ナナリーも微笑む。


「お兄様ばっかり夜更かししているんですもの。私だってたまには構わないですよね?」
「それを言われると痛いな。けど、夜更かしするのは今日だけだぞ?」
「はい」


兄妹はお互いにくすくすと笑った。
本来ならば、ルルーシュはナナリーがこんな時間まで起きていることを許しはしないだろう。今日だけは特別。
ルルーシュはピアノを一音だけぽーんと叩く。学園の寮とクラブハウスは離れているし、このダンスホールは防音効果が施されているので、音が漏れることはまずないだろう。


「さて……一体何の曲をご希望ですか?」
「はい、なにか…優しい曲をお願いします」
「喜んで」


ルルーシュは月の光によって青白く見える鍵盤の上に指を滑らす。
綺麗で重厚な音がダンスホールに響いた。
軽やかに動く指はそのままに、ルルーシュは今日の夕食の時を思い出す。
食事が終わった後のこと。久々に兄の演奏が聴きたい……そうナナリーに言われた時は正直戸惑った。
本国に、アリエスの離宮にいるときは、たしかによく弾いていた。母やナナリーのために。
音楽は嫌いではなかったし、むしろ好きな方だった。ピアノ、フルート、ヴァイオリン…とりあえず一通りはこなしたし、そこらのプロよりも上手いことは自負している。
だが、突き詰めていく気にはなれなかった。
芸術では母もナナリーも守れないから。彼女たちを喜ばすために、たまに弾く程度で良い。
それに芸術面は、あの義兄がいたから………。
チェスの弱い、義兄。
彼がピアノを弾くところを見せてもらったことがある。
彼は本当に上手かった。あまりに上手すぎて、嫉妬よりも思わず尊敬してしまったこともあった。


―――すごいですね、クロヴィス義兄上。
―――ピアノなら、ルルーシュも弾けるだろう?
―――義兄上と比べることもできませんよ。
―――それぞれ得意なものは違うのが当たり前だよ。チェスはお前に勝てないしね。


たわいもない話。まだ、幸せだった時の話だ。まだ、壊れていない幸せの話。
だが、幸せな時間は簡単に壊れた。
壊れてから、日本に来て、スザクと出会って、アッシュフォードに匿われて………。
ルーベンは、ルルーシュがナナリーのためにいつでも弾けるようにと、ピアノをここに用意してくれた。
けれど、ずっとピアノに触れることも弾くこともなかった。
今まで、弾かなかったピアノ。これからも、弾くことはないだろうと思っていたピアノ。
弾く気になったのは、ナナリーの頼みだけではない。
義兄に対する餞のつもりなのだろう。
己が、この手で、撃った、義兄に対する。
許してくれなんて思わない。―――憎まれて当然だから。
だけど、なにか送りたかった。気まぐれだったとしても、よくアリエスの離宮に遊びに来た義兄に。
だから………。
曲が終わった。ルルーシュは、そっと目を閉じる。


「……………届くと、良いんですけれども」
「え?」


ナナリーの呟きに、思わず目を開ける。
ナナリーは、お兄様はご存じないと思うんですけど、と少し寂しげに笑った。


「クロヴィスお義兄様が、お兄様のピアノ好きだって仰ってたんです」
「ク、ロヴィスが………?」


はい、とナナリーは微笑む。


「昔、私にだけ、こっそり教えて下さったんです。………だから、届くと良いなぁって」


ルルーシュは再び目を閉じた。泣くことは許されない。覚悟を決めたから。決めたつもりだから。だから………。


「………………そう、だね。届くさ、きっと。いや絶対」
「そう、ですよね。ありがとうございます、お兄様」
「………もう1曲、弾こうか?」
「良いのですか?」
「ああ、もちろん」


二人で笑い合う。
感傷に浸るのは今日だけ。今日だけだから。
明日からはまた、仮面をかぶる。
だから、今だけは、あの幸せだった時を思い出すことを、許してほしい。
空の義兄に、届くように。











夕べ、どこかからピアノの音がしませんでした??
あら、なにシャーリー。怪談話?
違いますよ! なんか、そう言うんじゃなくって、もっと優しーい綺麗な感じの!
ふーん………ルルちゃん、夕べなにか聞こえた?
さあ、聞こえませんでしたよ。…それよりも、こっちとあっちの書類に判子下さい。
………………うーん、やっぱり気のせいなのかなぁ………

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2007.06.26 | | Comments(0) | Trackback(0) | 短編小説

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